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発売当時は「これがSUV?」と驚かれるほどのスポーツカールックと前衛的なデザインで話題を呼んだ、トヨタ C-HR。先行した日産 ジュークやホンダ ヴェゼルのお株を奪って大人気モデルとなりましたが、SUVブームの中心がオフローダー風デザインへ移ってからは低迷中です。しかし新車販売はともかく、中古車買取市場での評価はどうでしょうか?
SUVというより「SUVロックの5ドアスポーツクーペ」のようなC-HR
1990年頃に始まったRVブームから2020年代の現在に至るまで、SUVはラダーフレーム式の本格オフローダーから乗用車ベースのシティオフローダーへと流行の中心を変えつつ、絶えず何かは人気モデルにランクインするという、ミニバンと並ぶ日本の定番ジャンルになりました。
初期には三菱 パジェロやトヨタ ランドクルーザープラドなどが人気でしたが、FF乗用車ベースのシティオフローダー、現在まで販売されている乗用車並の走行性能や快適性、使い勝手、経済性を成立させたモデルをいちはやくリリースしたのはトヨタで、1994年に初代RAV4を発売しています。
その後は昔ながらの本格オフローダー「ヘヴィーデューティーSUV」、駆動システムなどを若干簡素化、オンロード性能も重視した「ライトデューティーSUV」、最低地上高の高さを除けば構造やデザイン、悪路走破性は一般の乗用車に準じる「クロスオーバーSUV」に分かれ、最後のクロスオーバーSUVが日本では人気モデルであり続けました。
理由としては「不要な装備や構造で大きく重く、操縦性や快適性、経済性に劣る本格オフローダーではなく、同じ形で快適性や経済性に優れた中身は乗用車な車」が求められたからですが、クロスオーバーSUVがミニバンやトールワゴンとともに販売の主流となっていくと、その中でさらに個性が求められます。
つまり、クロスオーバーSUVの中でもオフローダールックの車(初代/2代目 日産エクストレイルや現行トヨタ RAV4など)、高級志向(トヨタ ハリアーなど)、そして居住性よりデザイン重視、ルーフがグッと低められたクーペルックSUVで、2010年代に入ると日産 ジュークやホンダ ヴェゼルが登場し、大人気となったのです。
そうした動きに、他社が開拓した市場を後発モデルでゴッソリ刈り取るのが得意なトヨタも2016年12月、満を持してデビューさせたのがC-HRで、4代目(50系)プリウスに続く新設計アーキテクチャ「TNGA」採用第2弾のプラットフォームへ、2代目オーリス後期型と同じ1.2リッターターボエンジンか、1.8リッターハイブリッドシステムを搭載していました。
特徴的だったのは、エアロパーツを装着すると最低地上高やデパーチャアングルといったオフローダー的要素はほぼ皆無となり、5ドアとはいえ後席のヘッドスペースはミニマムなど先行したライバル以上にデザイン重視のスポーツカールックで、発売前にはニュルブルクリンク24時間レースへ参戦するなど、SUVというより「着座位置の高いスポーツカー」的なポジションを目指していたように思えます。
実際、「SUVらしからぬSUV」C-HRは発売直後から人気モデルとなりましたが、実用性の面では少々犠牲にし過ぎた模様でブームは短く、当初4WDのみだった1.2リッターターボ車に安価なFF車、スポーティな6速MT車を追加するなど、安定した人気を誇るモデルが多いトヨタ車の中では、比較的矢継ぎ早のテコ入れが図られました。
それでもライズ、5代目RAV4といったシティオフローダールックで実用性も高いクロスオーバーSUVが人気となると、ブームを外れたC-HRの新車販売は低迷するようになり、2020年代になると次期モデルで巻き返すのか、新たに登場してタイで先行販売されているカローラクロスに取って代わられるのかという岐路に立たされています。
C-HR・中古車販売価格の相場と流通台数は?
C-HRの中古車販売価格の相場と流通台数を、大手中古車情報サイトからチェックしてみましょう(2020年11月現在)。
【C-HR(1.2リッターターボ車・2016.12~)】
修復歴なし:139.9~360万円・947台
修復歴あり:159~209.9万円・9台
【C-HR(1.8リッターハイブリッド車・2016.12~)】
修復歴なし:139~330万円・1,600台
修復歴あり:164.8~274万円・29台
流通台数が多いのは圧倒的にハイブリッド車の方で、スポーティで後にFF車へ6速MT車も追加された1.2リッターターボ車に比べタマ数は2倍近くありますが、価格帯は意外にもハイブリッド車の方が少し安めに感じます。
同様のハイブリッドシステムを積んだプリウスやRAV4と異なり、ハイブリッド4WDのE-Fourが設定されていないため4WDがターボ車に限られており、経済性で有利なハイブリッド車を選ぶユーザーは多いものの、価値としては4WDターボ車がやや高い傾向なようです。
C-HR・買取価格の相場と、モデル、年式、グレードごとの傾向は?
では、実際の買取相場ではどのように評価されているのでしょうか?これも大手買取専門業者のサイトで買取実績が確認されたものを、年式やグレードごとの評価と合わせて紹介します。
まずは年式ごとの平均買取価格と平均残価率(オプション込み新車実勢価格に対する買取価格の割合)です。
【C-HR(1.2リッターターボ車・2016.12~)】
2016年式:約129万円・約45%
2017年式:約120万円・約41%
2018年式:約121万円・約42%
2019年式:約138万円・約47%
2020年式:約172万円・約56%
総合:約137万円・約46%
【C-HR(1.8リッターハイブリッド車・2016.12~)】
2016年式:約124万円・約40%
2017年式:約136万円・約43%
2018年式:約140万円・約45%
2019年式:約162万円・約51%
2020年式:約194万円・約58%
総合:約156万円・約48%
買取相場としてはハイブリッド車の方が買取価格、平均残価率ともにターボ車を上回っており、買取市場でも流通が盛んで需要も多いハイブリッド車が歓迎されているようです。
ただし、ハイブリッド車は電動車の通例として「バッテリーの経年劣化により、純ガソリン車より市場での価値が落ちやすい」という傾向があり、C-HRでも最初期の2016年式でガソリン車より買取価格も残価率も逆転されており、この差はさらに低年式になるほど大きくなると予想されます。
また、1年以内~1年落ち程度までは50~60%程度の残価率が見込めるものの、それより古いと初回車検を迎える3年落ち以前から価値が急落し始めており、これが人気車種なら3年落ち程度まで50%以上の残価率は珍しくないことから、中古車市場でも「C-HRのようなスポーツカールックなSUVの需要は落ち着いた」と判断されているようです。
続いて大まかなグレードごとの平均買取価格と平均残価率を紹介します。。
【C-HR(1.2リッターターボ車・2016.12~)】
S-T(エントリーモデル):約110万円・約41%
S-T LEDエディション/LEDパッケージ:約111万円・約41%
S-T GR SPORT:約178万円・約57%
G-T(上級モデル)::約141万円・約47%
G-T LEDエディション:約137万円・約44%
G-T モードネロ/モードネロセーフティプラス:約131万円・約43%
G-T モードブルーノ:約151万円・約49%
【C-HR(1.8リッターハイブリッド車・2016.12~)】
S(エントリーモデル):約127万円・約43%
S LEDエディション/LEDパッケージ:約131万円・約44%
S GR SPORT:約189万円・約55%
G(上級モデル):約159万円・約49%
G LEDエディション:約149万円・約46%
G モードネロ/モードネロセーフティプラス:約165万円・約50%
G モードブルーノ:約170万円・約51%
ターボ車でもハイブリッド車でも共通しているのはエントリーモデルよりも上級モデルの評価が高く、GRガレージの手が入ったスポーツコンプリートモデル「GR SPORT」が全く別格の評価を受けている事です。
GR SPORTは他のトヨタ車でも設定され、スポーティに引き締まるエアロパーツによってグレード中一番人気を誇ることが多いのですが、スポーツカー的なSUVであるC-HRでは、よりハッキリした形で差が能われており、特にターボ車ではベースグレードの15%以上増しと、圧倒的な高評価を得ています。
C-HRを売るならハイブリッドは今が旬!ターボは地道に人気が持続しそう
純ガソリン車とハイブリッド車が設定されている場合は、大抵の場合において「高年式はハイブリッドが、低年式になるほど純ガソリン車の評価が高い」という傾向があり、発売から4年経ったC-HRのハイブリッド車初期型などは、これから年式の割に評価が下がるのは仕方ないと受け入れるしかありません。
むしろ古くてもまだ4年落ち程度といううちに売却や下取りをしていかないと、リセールバリューはターボ車に比べどんどん差をつけられるようになっていきます。
例外的にGR SPORTのみはデザインの優美さである程度のリセールバリューを維持できますし、モードネロ/モードブルーノといった内外装が凝っている特別仕様車も同様ですが、「S」や「G」については早めに売り抜け、流行のRAV4などへ乗り換えたり、ハリアーなどへステップアップを検討していくと、今ならまだ高価買取を見込めそうです。
1.2リッターターボ車の方は、ターボという語感から想像できる高出力仕様というより、経済性に優れ、1~2ランク上な排気量と同等のトルクを実現したダウンサイジングターボ車ではありますが、ハイブリッド車にはない、そして発売から4年たってもなお追加されない4WD車がありますし、FF車には6速MTもあります。
C-HRをアウトドアギア的なSUVよりスポーツギア的に考えるユーザーにとっては魅力的なモデルですし、走行用リチウムイオンバッテリーの経年劣化による性能低下を心配する必要もありませんし、年式が多少古くなっても根強く市場での価値が維持されそうです。
どうも一過性のブームに終わりそうな気配のあるC-HRの場合、高価買取を狙うならターボ車に限っては次に欲しい車が出るまで少々ノンビリ構え、低年式になってもハイブリッドよりは高価買取が見込めますが、ハイブリッドはなるべく早めの売り抜けをオススメします。
※中古車販売価格や買取相場は2020年11月現在の金額です。