世界的には瞬く間に普及しつつも、日本では白タク行為に対する厳しい規制によって、首都圏など一部地域でタクシー/ハイヤー配車サービスに限定されている『ライドシェア』サービス。しかし、運賃による利益を前提としない非営利サービスは現在でも複数存在し、昔ながらの「ちょっとガソリン代や高速代を負担して目的地へ一緒に旅する」相乗りサービスは存在します。その現状を見てみましょう。

長距離ライドシェアサービス『notteco(のってこ!)』

2007年に運営開始し、「日本最大級のライドシェア(相乗り)サービス」を標榜する『notteco』は、株式会社notteco(東京都千代田区)が運営する相乗りマッチングサービス。

「安く移動したい」「快適に移動したい」という『同乗者』と、「ガソリン代や高速代の実費を節約したい」ドライバーをマッチングさせるサービスで、公式HPによれば会員数40,000人、年間7,000ドライブが成立しているそうです(2017年3月時点)。

つまり同乗者、ドライバー合計40,000人のユーザーが存在する中、実際に使っているのは1/6以下、実際には1人で複数回利用しているケースも多数あると考えれば、日本最大級のサービスでも、まだあまり有効活用されているとは言えません。

メリットとしては、『移動費用が割り勘』『同じ目的地や趣味の人と相乗りする事で移動がもっと楽しく』『柔軟で快適に移動』と紹介されており、確かに同じイベント会場に行く場合などは、相乗りの縁でさらに楽しい出来事があるかもしれませんし、単純に費用を浮かすためと割り切るのもアリです。

ユーザー登録に際してはFacebookアカウントかメールによる認証に加え、ドライバーは運転免許証、同乗者は運転免許証か保険証による本人認証が必要となります。

その上でドライバーはドライブ予定を登録し、希望のドライブを探している同乗者とメッセージでやり取りの上、同意すれば相乗り成立。

気になる安全性に関しては運転免許証や身分証明書の提出を義務付けている事や、同乗者/ドライバー双方の相互レビューや、書きにくい内容の場合は運営事務局への通報、さらに運営事務局によるプロフィールやドライブ情報の24時間体制監視を行っているとしています。

ただ、実際にドライブ中に起きるトラブルへの対処がどうなるか、事故の対応については「基本的には利用者間での解決をお願いしている」となっており、自動車保険(任意保険)の加入や加入状況の記載はあくまで『推奨(任意)』となっているのが気になるところ。

nottecoの利用料金は2019年1月時点で無料であり、白タク行為認定されないため実費(ガソリン代や有料道路使用料)を超えない範囲に相乗り募集料金を制限していますが、システム利用手数料すら取らないのは、それを払うだけのクオリティがまだない、性善説に寄りかかったサービスだ、と理解した方がいいかもしれません。

ちなみに実際の募集ドライブの例は以下。

1.2019/1/22 宮城県仙台市仙台~(つくば経由)~成田空港
車種:2007年式BMW M5(高級高性能セダン)
募集金額:23,500円(つくば市止まりなら2,900円、つくば→成田空港なら600円)

2.2019/3/31より毎日 宮城県石巻~仙台市
車種:2009年式ダイハツ コペン
募集金額:500円
特記事項:通勤のため朝7時半から9時半まで毎日運行(休日はないのでしょうか?)

他に首都圏からだと台数は多く、中には『フリードライブ』なる募集金額ゼロもあり、評価の方も「ブレーキが遅くハラハラ」であったり、女性が同乗者ゆえか男性ドライバーへコメントでは好評ながら実際には星5点満点の4点など、やはりサービスの品質面という意味ではバラバラなのは、ライドシェアらしいところで、嘘はついていないのがかえって好感。

また、通常の相乗りとは別に、北海道の天塩町と提携し、天塩町~稚内市の間で住民同士による1便200円のライドシェアサービスが行われています。

非営利のため格安で移動でき、過疎地交通のテストケースとも言えますが、あくまで「通勤のついで」なようで、継続的に行うには利益の出る営利事業化しないと難しいのかもしれません。

スマホで誰かの車を呼ぶスマート送迎アプリ『CREW(クルー)』だが…

スマホ普及以前からサービス開始しているnottecoがむしろスマホ対応をあまり意識していないのに対し、2015年に株式会社Azit(東京都港区東新橋)が始めた『CREW(クルー)』は、スマホの位置情報などをフルに使ったスマート送迎が売り。

乗りたい同乗者と乗せたいドライバーを繋げるという基本部分はnottecoと同じですが、それだけではない特色があります。

まずドライバーはスマホと普通免許、マイカー(家族名義でも可)を所有しているだけで登録可能なだけでなく、CREW登録ドライバーの特典として『CREWでのドライブ以外も含め、ガソリン代がリッター2円割引を永久付与(登録期間は2019年1月26日午前3時までの限定)。

年間1,000L上限までとはいえ魅力的ですが、ベンチャー企業で『永久付与』と言われると、とにかく有効なうちに登録して使ってしまおうという意識が働くかもしれません。

また、ライダー(同乗者)からの評価が高いドライバーには、アルコール検知器や特製グッズの提供または貸与も予定しているようですが、アルコール検知器はむしろ評価の高いドライバーより、ドライバーの評価を上げるべく貸与すべきではないでしょうか。

また、公式HPからでは実際にどう利用するか不明なのでアプリをダウンロードしてみたところ、乗車可能エリアは東京駅~秋葉原駅~高田馬場駅~代打橋駅~学芸大学駅~五反田駅~品川駅~晴海埠頭あたりを結ぶ非常に狭い範囲で、サービス利用時間は夜8時から翌朝3時までの短時間に限られます。

レビューを見ても言い値のため乗車地域のモラルにより同乗者の支払額は異なり、ゼロ円乗車すらありえるなど、『相乗り』だとしてもさすがに無茶苦茶です(渋谷から乗車する同乗者にゼロ円乗車が多いというレビューもあります)。

さらには運営事務局が相乗り負担額の半額を持っていくため、レビュー欄には「利益どころか、やるだけ損」という酷評が並び、公式HPでは事故時の保険サポートや車両修繕費用割引が掲載されていますが、実際にはドアパンチの修繕程度が関の山とか。

レビューだけを信用するわけにはいきませんが、少なくともドライバー向けの『CREWドライバー』アプリでは酷評のみが並んでおり、アプリ自体の完成度も低いようなので、事業として成り立つ以前に登録ドライバーがいなくなってしまうのでは?という感想になるのも致し方ありません。

運賃収入が認められない現状でが、「ライドシェアのみでの収益で事業者として存続させようとするベンチャー企業は、早晩淘汰の対象となる」という好例になってしまうのでしょうか?

2018年12月30日には突如、「2019年1月1日から末日までメンテナンスのためのサービス一時停止」を宣言してしまい、果たして無事再開されるのか、再開後にサービス向上が見込めるのかが注目されます。

システムとして完成度が低すぎる相乗りベンチャー『norina(ノリーナ)』

2016年6月に株式会社ZERO TO ONE(神奈川県横浜市青葉区)がリリースした『norina(ノリーナ)』ですが、まずアプリをダウンロードしてトップ画面を見ると、確かに相乗り希望ドライバー一覧は出るものの、出発地と目的地のみで車種すら不明。

では確かめようと画面をタップすると、いきなりユーザー登録を求められるため、レビュー欄を見る限りこの段階で尻込みして登録すらしないユーザーが多いようです。

このアプリがどの程度使えそうなのか全くわからない段階で個人情報の入力を要求されるというのは今の時代非常に怖い事なのですが、プライバシー・ポリシーに関して時代の要求に応えておらず、このままでは事業の発展性に乏しいと言わざるを得ません。

また、既に紹介したサービスも含めて日本語対応のみなので、ライドシェアに慣れていて積極利用しそうな外国人への対応が皆無なのも、今後大手が参入すれば瞬殺されそうな予感しかしない理由です。

さらに現状では長距離移動を中心にそれなりに相乗り募集ドライバーがいるようですが、パソコンから公式ホームページを閲覧し、『都道府県から探す』でタブブラウザを使い、「別なタブで開く」を選択すると404エラーになります(普通に左クリックでは開く)。

また、アプリ上では仙台から九州へ長距離移動するため相乗り募集している人がいるのに、公式HP上で『宮城県』をクリックしても、あいのり検索結果(宮城)では誰も表示されず、システムの完成度が低すぎるのも問題です。

レビュー欄でも「相乗り料金を自分で決められず、システムから一方的に押し付けられて高額だった上に狭い車種で苦痛だった」など酷評が多く、これならまだ前項の『CREW』の方が、地域こそ限定的ながら機能しているだけマシかもしれません。

タクシー相乗り含めた他のアプリも安定性に欠け、地域限定ながら安心できるのはUber?

他にもいくつかアプリを試してみて、中には「タクシー相乗りアプリ」という、少なくともドライバー側の処理は最低限で済む日本の特性を活かしたサービスもありましたが、単なるタクシー配車アプリと比べてシステム自体の安定感は今ひとつという印象です。

何だかんだで、開発されたばかりのアプリやサービスはまず「安定して使える状態にならないと、評価にすら値しない」という厳しい現状で、今回見た中では『notteco(のってこ!)』くらい背伸びせず割り切ったサービスの方が、今後の伸び代を感じさせました。

そして海外発の黒船・『Uber』は現状で首都圏など限定された地域のみでのサービスですが、さすが世界的には安定しきっており、日本国内では現状ハイヤー送迎サービスのみで普通に運賃を取られるためサービス利用は高額とはいえ、安心して使えるサービスなのは間違いありません。

海外言語対応も含め、今の日本でライドシェアを解禁したとしても、Uberが全て美味しいところを持っていくか、孫社長が肝入りするであろうソフトバンクのサービスが辛うじてそれに追従、既存サービスで生き残れそうなのは『notteco(のってこ!)』くらいではないでしょうか?