これまでオーナーが乗る用事がなければ、ただ駐車されたまま何も生み出す事なくただ時間が過ぎるだけ…そんなマイカーの常識を覆す自動車文化の革命が『ライドシェア』と『カーシェア』です。前者はタクシーやハイヤーと、後者はレンタカーとの近似性がありますが、個人が容易に参入できるのが革命的なところ。両者の違いを説明した上で、あなたならどちらを使うか?に参考となるお話をご紹介したいと思います。

これまでの「自家用車」は、用事がなければただの置き物だった

トラックのような貨物運搬用車両や軍用車両はともかく、乗用車とはまず乗合馬車に取って代わるバスとして登場し、次いで王侯貴族が個人的に所有する自家用の乗用車として発展しました。

やがて乗用車は小金持ちの富裕層でも、やがて量産技術が確立されると労働者階級でも所有できるほど安価になっていきましたが、基本的には『オーナーの持ち物』であり、オーナーの親族や友人が借りて乗る事はあっても、基本的に所有者が運転するものとして時代は流れます。

しかし、排ガス規制強化、低燃費化、高性能化、衝突安全性能強化、運転支援機能など予防安全性能強化、運転の簡易化や自動化、それらに伴う複雑なコンピューター制御やセンサー類の追加など、『安全で環境に良い乗り物』と進化していく段階で、再び価格上昇が始まりました。

かつてのようにひたすら簡素ながら十分な実用性を持つ車は成立しにくくなり、維持はともかく所有、つまり購入時点でハードルが上がり、自動車保険の高額化がまた拍車をかけていきます。

こうした時代の変化に対し、使用しない時はただ駐車場に止めてあるだけ、場合によってはロクロク乗りもしないのに税金だけかかっていき、ひどい時には月極駐車場代さえ飛んでいくという、役に立つ機会はそうそうないのにコストばかりかかる金食い虫とされるようになってきました。

さりとてレンタカーを毎回借りたりタクシーに毎回乗ると割に合わない程度には車を使う用事があり、居住している地域や目的地に安価な公共交通機関がない場合は、やむをえず車を所有し続ける事もあります。

しかし無駄な時間を何とか有効活用できないか…それも可能であれば利益になる形で?という事で生まれたサービスが、持て余している車を所有するオーナーと、できれば安価に車を使いたいユーザーを結びつける2つのサービスです。

それが、ヒマなオーナーと使わない車を、移動手段を求めるユーザーへ結びつける『ライドシェア』と、ほとんどの時間休眠状態にある車を必要とするユーザーへ結びつける『カーシェア』という2つのサービスで、いずれもGPS機能のあるスマートフォンが普及して初めて実現したサービスでした。

営利目的の『相乗り』、ライドシェア

車を使いたいユーザーから見た場合、ライドシェアはスマートフォンアプリから乗車可能な車を呼び出すという意味でタクシーの配車サービスと似ています。

ただし、アプリで呼び出すと近在の適当なタクシーを無作為に呼び出すタクシー配車アプリと異なり、ライドシェアアプリはユーザーが表示された選択肢の中から、ドライバーのスキルや車種、料金、評価などを見て選択するのが大きな違いです。

登録ドライバーから見た場合は、法人タクシーと異なって会社からの拘束時間はなく、街を流して客を探したり、客が多い場所へ並んで客待ちをする営業をする事もなく、自ら決めた時間へ好きな時間に登録ドライバーとして活動できるため、ヒマな時間にひと稼ぎを目論む事も可能。

もちろんある程度の繁忙期がわかればその時間に合わせたり、あえて誰もが寝静まりタクシーすら少ない時間帯を狙うなど、自分の生活スタイルを決めても良くなります。

もちろん、ユーザーが好まない車種に乗ったり低い評価をつけられると稼げないので車を自分の自由なようにするには限界が生じますが、逆に言えば需要さえ見込めるならユーザーが望むような、ドライバーにとっては単に所有するよりちょっと高価な車を購入できるという考えも可能です。

そもそもはヒッチハイクから始まり、インターネットの普及とSNSで個人間の結びつきやアピールが可能になったことでプチオフ会的な長距離の『相乗り』が生まれ、そこに仲介会社を挟んで手数料を取る代わり、信頼感を高めたのがライドシェア。

単に自家用車へ「お金出せば乗せていってあげるよ」という白タクシーとは異なり、ドライバーもユーザーも登録制なため悪質な登録者は淘汰されていくため、タクシーほどサービスの均一性はないものの運賃は安く、自家用車の『相乗り』よりは高いものの信頼性は高い傾向にあると言えます。

自動車を複数のユーザーがドライバーとして使いまわすカーシェア

最初の項で簡単に紹介した通り、タクシーに近いライドシェアとレンタカーに近いカーシェアでは利用する仕組みが全く異なります。

ユーザーがスマートフォンアプリを使って近隣から利用できる車を探す、ユーザーも車のオーナーも登録制なので評価の低いオーナーや車は淘汰されていくという部分はライドシェアと同じです。

違うのはそれ以外で、カーシェアは『相乗り』ではなくユーザー自らが運転し、その車を運転する可能性のあるユーザーは複数いるという意味でレンタカーに近くなっています。

レンタカーと異なるのは第一に個人が所有する車もサービスに登録していればカーシェア対象となる事と、事業者が行っているカーシェアの場合、特に時間貸し駐車場業者(タイムズ24など)が行っているカーシェアは、多数の駐車場をカーシェア拠点にできた事です。

レンタカーの場合は特に郊外では店舗自体が少なく、観光地で自由に動き回るため、あるいは街中からビジネスに出かける用途では非常に便利ではありますが、たとえば郊外の住宅地などでは駅の近くでもさほどレンタカーの店舗はありません。

しかし、住宅地の真ん中にある個人の車や、駅の近くにある時間貸し駐車場などにあるカーシェア車両ならば、レンタカーよりも近場に借りられる車が多く、利便性ははるかに高くなります。

このうち事業者が駐車場で行っているカーシェア車両については、予約さえすれば止めてあるカーシェア車両を会員カードなどで解錠、車内にあるキーでエンジンをかけてすぐ運転する事が可能です。

ただし個人のカーシェアの場合、オーナーがいなくても車を解錠できる仕組み(スマートデバイス)が設置されているとは限らないため、アプリ内のチャットでやり取りするなどして、オーナーから直接鍵を受け取る場合があります。

このような場合、事業者の従業員などではなく一般の個人となるべく関わりたくない、プライバシーは守りたいというユーザーの場合は気が引けてしまうかもしれず、それはオーナーでも同様です。

さらに一定のクオリティを保つよう配慮された事業者のカーシェア車と異なり、個人のカーシェア車のクオリティは完全にオーナー次第。

もちろんあまり汚い、状態の悪い車だとユーザーからの評価が低くなるので淘汰されてはいきますが、乗ってから芳香剤の香りや化粧品、体臭などの残り香が合わないなど、個人的な好き嫌いで評価が決まりがちなのも難点です。

とはいえ、個人のカーシェア車の方が利用料自体は安い事が多く、時間貸し駐車場がないような地域では個人のカーシェア車が頼りとなります。

現在はまだ個人のカーシェア車は地方でも普及しているとは言い難いものの、地域やマンションなどのコミュニティをうまく使えば、住民共同のカーシェア車を仕立てる事も可能なため、今後の可能性に期待です。

ライドシェアとカーシェア、どちらを使うのが良いか?

日本においてライドシェアとカーシェアは、どのようなユーザーがどちらを使うのが最適か?という問いに対しては、2019年1月現在の段階では割とシンプルです。

まずライドシェアは、日本で営利目的のサービスが首都圏を除きまだ認められておらず、認められているのもタクシーやハイヤーの配車に限られますから、ほとんどの地域では営利目的のライドシェアは利用自体ができません。

可能なのは『個人的な移動のついでに、ガソリン代や高速料金分をいくらか負担してくれれば一緒に乗せていってあげますよ』という非営利目的の『相乗り』ライドシェアのみで、タクシーやハイヤー並の利便性はないのです。

一応は個人ライドシェアのマッチングアプリはありますから、それで都合の合う登録ドライバーがいれば、あるいは安く移動するかもしれない、という程度で、首都圏のライドシェアもタクシーを呼ぶのと変わりがありません。

従って、現在の日本で利便性が高いのはカーシェアの方、それも自分がドライバーとして運転できる状態で、カーシェア車が近くにある場合に限られる、という限定的な状態です。

ただし、カーシェアの方は法律的なハードルは低く、時間貸し駐車場業者のみならず自動車ディーラーやリース業者、レンタカー業者も参入しているため、今後は増加傾向で、そうした事業者の中には定額制で自由に車を乗り換えられるサービスすらあります。

自動車ディーラーが車を売らずにカーシェア?と思うかもしれませんが、むしろ販売している車へ多く乗ってもらう機会を作ることで、販売促進につなげたい狙いがあるようです。

ほとんどの場合に目的地での『乗り捨て』ができないので借りた場所へ帰ってこなければいけないことを除けば、前述したようにカーシェアの利便性はレンタカーよりはるかに高くなります。

今後カーシェア車が増加すれば車を今まで持っていなかった人でも車を使えたり、ミニバンなど多人数乗車する車はカーシェアで済ませ、個人としてはスポーツカーなど好きな車を買えるようになると考えれば、今はまだ見通しのたっていないライドシェアより、まずはカーシェアに期待したいところです。